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関雄二、狐崎知己、中村雄祐 編著『グアテマラ内戦後―人間の安全保障の挑戦』

(みんぱく 実践人類学シリーズ5) 明石書店、2009年4月

ポスト・コンフリクト期,例えば内戦後の発展途上国に対して,文化人類学者を含む研究者の集団は,社会復興のために役立ちうるアプローチの範囲をどこまで広げられるだろうか?
本書は,中米グアテマラを事例とする人間の安全保障に挑む,総合性と専門性を両道しようとする研究アプローチの試みの記録である.

目次

序章 人間の安全保障の挑戦(編者)
1 はじめに
2 人間の安全保障の政策論再考
3 グアテマラ=人間の安全保障という課題の実例
4 各章の紹介

第一部 恐怖からの自由
第1章 グアテマラにおけるジェノサイドと正義
――リオ・ネグロ村の女性と子供たちの場合
(フェルナンド・モスコソ・モジェール:吉川敦子・関雄二訳)
1 ジェノサイドから裁判へ
2 グアテマラにおけるジェノサイド
3 ラビナル市における暴力
4 リオ・ネグロにおけるジェノサイド
5 和平プロセスでの正義
6 リオ・ネグロの事件
7 結び

第2章 大量虐殺の記憶装置としてのミュージアム(関雄二)
1 記憶の歴史化
2 パンソスの殺戮事件の時代的背景
3 パンソスの虐殺と証言、そして秘密墓地の発掘
4 コミュニティ・ミュージアムの建設
5 博物館展示の完成
6 モニュメントの建設
7 記憶の回復と社会の復興
8 記憶の生成過程の行方

第二部 欠乏からの自由
第3章 ポスト・コンフリクト社会における二言語教育
(渋下賢・久松佳彰・上岡直子)
1 はじめに
2 二言語教育政策の変遷
3 二言語教育実践の多様性
4 おわりに

第4章 ポスト・コンフリクト社会への復興協力
――研究者チームによる地方公共政策の改善研修(狐崎知己)
1 はじめに
2 グアテマラ和平協定の履行と国際協力
3 ジェノサイドの実態解明
4 国家補償
5 治安問題
6 経済発展と財政改革
7 地方公共政策の改善を目指して――JICAグアテマラ国別研修「公共政策の計画立案の能力向上」
8 おわりに――問われるメソ感覚

第5章 地域リーダーと文書管理
――JICA研修におけるワークショップの試み(中村雄祐)
1 JICA研修における文書管理ワークショップの位置づけ
2 第一回文書管理ワークショップ(二〇〇五年一〇月三一日@東京)
3 一期生フォローアップ(二〇〇六年八月一九~二一日@コバン市)
4 第二回文書管理ワークショップ(二〇〇七年四月@東京
5 JICAグアテマラ事務所現地スタッフ向けの文書管理講義(二〇〇七年八月一七日@グアテマラ・シティ)
6 現地視察(二〇〇七年八月一八~二三日@グアテマラ各地)
7 第三回文書管理ワークショップ(二〇〇七年一一月、一二月@東京)
8 文書への意識

第6章 グアテマラにおけるアマランサス復活の意義(根本和洋)
1 はじめに
2 先住民農業と伝統作物の文化的重要性
3 メソアメリカ起源の失われた作物アマランサス
4 途切れたアマランサスの記憶
5 マヤの伝統作物アマランサスを復興の軸に
6 おわりに

追記
JICA研修――その後の展開(狐崎知己)

あとがき

明石書店ホームページ:
http://www.akashi.co.jp/home.htm