講座のご案内

会員各位

後藤雄介会員より、早稲田大学エクステンションセンター開講のオープンカレッジ講座についての情報が寄せられましたので、ご案内いたします。詳細・申し込みはこちら(http://bit.ly/13tHmim)をご覧ください。

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アンデス学の最前線──アンデスの過去と現在をつなぐ──

■曜日/時間:土曜日/14:45〜16:15
■日程:全10回 ・  09/28 ~ 12/14
■目標
 いにしえの文明に対する考古学・人類学的関心からペルー・エクアドル・ボリビア等の国々の最新の事情に至るまで、過去と現在をつなぐことで、アンデス研究の最前線を紹介し、その全体像を明らかにする。
■講義概要
 アンデス学の最前線を知るということは、インカをはじめとするいにしえの文明のみならず、現代のアンデス諸国の事情にも触れることであ る。本講義では、アンデス文明の歴史的・空間的広がりについて学ぶ一方で、現代アンデス諸国の最新事情について、地域内の歴史・経済だけでなく、国境をも 超えて展開する文化のダイナミズムをとらえることを目標とする。このように過去と現在をつなぐことで、私たちのアンデス理解は一層深まるだろう。

■各回の講義予定
【1】9/28 アンデス学の広がり
後藤雄介 早稲田大学教授
 みなさんはアンデスと聞いて何を思い浮かべるか。アンデス学が目指すのは、インカ文明はもちろん、現代社会の最新事情まで含めた、アンデスの過去と現在を トータルとして理解すること。この初回講義では、アンデス学を学ぶ入口として、講座の全体の見取図をコーディネーターとして提示するところにある。
【2】10/5 アンデス北方における「インカ」とその末裔
大平秀一 東海大学教授
 15世紀半ば以後、ペルーのクスコを居住域としていたインカは、コロンビア/エクアドル〜チリ・アルゼンチンにまで拡大した。ペルーから遠く隔たった場所 にも、その痕跡が遺跡として残存している。また、インカと共に各地に移動した人々の末裔と判断される社会も認められる。本講義では、エクアドル南部におけ るインカの遺跡とその末裔たちの生活・祭りを取り上げ、歴史の継承性を考察したい。

【3】10/12 アンデス考古学の発展と天野博物館の貢献
阪根 博 ペルー・天野博物館・学芸主任
アンデス考古学の発展は日本の考古学調査の貢献抜きには考えられない。故・天野芳太郎によってペルー・リマ市に創設された天野博物館もチャンカイ文明の解 明によってこれに貢献してきたが、近年は世紀の発見と目されるシクラス遺跡の発掘作業で注目を集めている。本講義では、天野博物館のアンデス考古学への貢 献の歴史を明らかにするとともに、シクラス遺跡の最新の状況について報告する。

【4】10/19 食卓からペルーが見える―輸出農産物からみる今日のペルー経済―
清水達也 日本貿易振興機構アジア経済研究所・研究員
ペルーと言えば、以前は政治の混乱や治安の問題のニュースを聞くことがよくあった。しかし2000年代以降、民主的な政権が続き、市場経済を重視した経済 政策により、ラテンアメリカ域内でも経済的に注目される国になっている。このような今日のペルー経済を、最近輸出が拡大しているコーヒーやアスパラガスな どの農産物を事例に説明していく。

【5】10/26 ボリビア多民族国のアフロ系住民
梅崎かほり 神奈川大学助教
ボリビア多民族国(旧名:ボリビア共和国)には、植民地時代にスペイン人によって連れてこられた黒人奴隷の子孫が今なお暮らしている。20世紀の終わりま で、ボリビア社会でもその存在が認識されていなかったこれらのアフロ系住民が、自らの村の音文化を「国民文化」として認めさせ、国家の一員として権利を主 張してきた復権運動の経緯を辿りながら、ボリビアの「多文化主義」のあり方を考える。

【6】11/9 在外ペルー人事情
山脇千賀子 文教大学准教授
2013年現在、外国に在住するペルー人は約300万人(全人口の約11%)と推計される。日本にも約6万人のペルー人が在住するが、海外在住のペルー人 動向と違いはあるのか。在外ペルー人組織とその活動、母国との関係、在住国における社会統合をめぐる問題などについて紹介したい。

【7】11/16 ニューヨークにおけるアンデス文化の実践
佐々木直美 法政大学准教授
2013年春から夏にかけて実施するニューヨークのペルー人コミュニティにおける文化的実践の調査をもとに、ペルー中央山地のアヤクチョ地方ゆかりの「ハ サミ踊り」の継承と変化について報告する。ペルー国内での都市化を経たあと、グローバル化とともに世界各地に移住した踊り手たちのライフヒストリーから伝 統舞踏とアイデンティティについて考察したい。

【8】11/30 アンデス文明の形成過程の特徴
鶴見英成 東京大学助教
南米アンデス地域各地の多様な環境下にて、壮麗な神殿建築を中核とする定住社会が紀元前3千年頃より成立した。アンデス文明の形成過程は、旧大陸の古代諸 文明の多くが大河流域に展開したのとは大きく異なる。また他の文明と直接的に接触せず発展したという点でも独自性が高い。最新の考古学研究の動向を紹介 し、その特徴を明らかにする。

【9】12/7 アンデス文明とその末裔―先住民族の今―
稲村哲也 放送大学教授
インカ帝国滅亡後、アンデスはスペイン植民地となり、ヨーロッパ人とその文化が入ってきたが、高地では特に、先住民族は独自の生活・文化を伝えてきた。標 高4,000m以上のプーナ(高原)で、リャマとアルパカを飼う牧民が生活している。また近年、インカ期に行われていたラクダ科野生動物ビクーニャの追い 込み猟チャクが400年の時をへて復活した。先住民族の今の姿を明らかにしたい。

【10】12/14 アンデスの過去と現在をつなぐ―ある作家の足跡をたどって―
笹久保伸 アンデス・ギター奏者/後藤雄介 早稲田大学教授
アンデスの過去の文明と現代の社会をつなぐものとして、先住民インディオの存在がある。人口的には多数を占めながらも社会的・文化的には長らく周縁に置か れ、一方で混血化も進行している彼らは、ペルーの文学や音楽はどう描いてきたのか。本講義では先住民文学の騎手として知られるホセ・マリア・アルゲーダス をてがかりに、現代のインディオのありようについて探る。