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三田千代子著『「出稼ぎ」から「デカセギ」へ―ブラジル移民100年にみる人と文化のダイナミズム』

不二出版、2009年3月25日、総頁数296頁

ヒトの移動が人類史を紡いできたという視点に立って、ブラジル向け日本移民研究に取り組んできた業績をまとめたものである。ブラジル移民もデカセギ現象もそれぞれの時代の日本とブラジルの両社会状況を背景に展開されてきたことを提示している。ブラジルの日本移民とその子孫に焦点をあわせるとブラジル社会史論にもなる。

目次

序 章 移動するヒト・変容する文化
1 ヒトの移動と文化のダイナミズム
2 近代のヒトの移動
3 グローバル化時代のヒトの移動と日本

I ブラジルの日本人―――去りし者
第1章  近代日本の海外移民政策
1 明治維新政府と「元年者」の失敗
2 官約移民と日本社会
3 移民業務の民営化による私約移民の送出
4 メキシコにおける日本人植民地建設の試み
5 近代日本における海外移民の役割
第2章  ブラジルの移民政策と日本移民
1 ヨーロッパ移民の代替としての日本移民
2 国づくりの理念「白人化(ブランケアメント)」と日本移民の導入
3 日本移民の制限の始まり
4 ナショナリズムと移民政策
5 レイス「排日法案」の提出
6 ボテーリョ報告書
第3章  サンパウロ日本人共同体と経済活動
――― 1920年代-1950年代
1 日本人移住地の集団形態と農業形態
2 コチアの日本人共同体
3 バストス移住地
第4章  「国民国家」から「多人種多民族国家」へ
1 「国民国家」の形成と外国移民
2 第2次世界大戦と日本移民
3 「多人種多民族国家」へ

II 日本のブラジル人―――来たりし者
第5章  デカセギ現象をめぐる日本とブラジルの新たな関係
1 「ブラジルの奇跡」の後
2 日本の高度経済成長
3 「デカセギ」元年期の日系人就労者
第6章  在日日系ブラジル人の社会・文化生活
――― 神奈川県綾瀬市を中心に
1 神奈川県の外国籍住民
2 綾瀬市とブラジル人
3 アンケートにみる日系ブラジル人の姿
4 デカセギ・ブラジル人と日本社会
第7章  彷徨(さまよ)うデカセギ・ブラジル人
1 ポルトガル語となった「デカセギ」
2 ブラジル人の分布
3 彷徨(さまよ)うブラジル人
4 多様な生活戦略
5 グローバル化時代の教育とは
第8章  ナショナリズムとエスニシティ・グローバリゼーションと
エスニシティ ―――「デカセギ」送出地バストス市の事例
1 「日本人村」としてのバストス市の概略
2 「日本人村」の経済活動と社会組織
3 ナショナリズム下の「日本人村」
4 第2次世界大戦と養蚕業
5 「日本人村」の再出発
6 「ジャポネス」・エスニシティ
7 デカセギとバストス
終 章 ブラジルの日本人、日本のブラジル人
―― 移動と定住の社会史的考察
1 ブラジルの日本人
2 日本のブラジル人

あとがき
ブラジル移民史年表