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エルナン・コルテス著 伊藤昌輝訳『コルテス報告書簡』

A5判 / 582ページ / 上製 / 定価:7,400円 + 税 
ISBN978-4-588-37404-3 C0022 [2015年11月 刊行]

コロンブスの新世界到達より約三十年、わずかな兵を率いてメキシコに出発し、多くの先住民を味方につけて強大なアステカ帝国を打ち倒したスペインの冒険家が、戦いに次ぐ戦いの中でしたためた国王宛の書簡。宗教的理念を語りつつ現実主義的外交を駆使し、冷徹な軍人として陣頭に立ちながら占領後の植民経営を見据え、中世と近代のはざまを駆け抜けたあまりにも多面的な「征服者」の虚実が明らかになる。

目次

第一書簡 1517年以降に行われた本土発見事業のあらましについて記述。コルテスがキューバ総督ベラスケスの命令に背いて新しい土地に定着する決意を固めた次第が巧妙に報告される。

第二書簡 コルテスは退路を断つためすべての船を破壊してから高原に向かって出発。トトナカ族、トラスカラ族を見方につけ、大都テノチティトランに入場。大都の様子をリベラのフレスコ画のようなタッチで描写し、この地の民族・文化・社会等に関しても克明に報告。しかしアステカ人の反乱に遭い、“悲しき夜”を経て大都から撤退、スペイン人に忠誠をつくすトラスカラ人の援護を受けトラスカラで報復戦の準備にはいる。

第三書簡 トラスカラで12隻のベルガンティン船を建造してからアステカの王都に向かって再び軍を進め、まず湖畔の集落を制圧してから大都包囲戦と王都陥落の様子、そして最後にコルテスは征服の版図を地方に拡大していくが、国王の査察使タピアが到着する。 

第四書簡 戦闘終了後の事態収拾、周辺の多民族征服、新しい国の組織、テノチティトランの跡地における新たな都の建設、ベラスケス総督によるコルテスへの復讐と征服の成果を横取りしようとする試みなどについて報告。

第五書簡 コルテスが各地に派遣した部下のうち、ホンジュラス地方に向かったオリードが反乱を起こしたため、その鎮圧のため自ら500の兵を率いてメキシコ市を出発し現地に赴いた1000km 以上におよぶ大遠征について報告しており地理学的観点からも興味深い。

 訳者解説
 年表
 参考文献
 索引